□ あらすじ
21世紀後半、グローバリゼーションによる広範囲な経済活動の発達と共に
資源ナショナリズムによる利権確保の動きが広がっていた。
その中でも、ハイテク産業で必要とされる各種レアメタルの争奪戦は熾烈を
極めており、アジア・欧州・北米・アフリカ・ロシアなどの排他的な
資源ブロックのほか、地球環境保護の趨勢により地上から海中に及ぶ鉱山開発も
ままならない状況となっていた。
こうした国際情勢により、先進国各国は本格的な月資源開発に乗り出すことになる。
ここで注目されたのが「軌道エレベーター」技術である。
カーボンナノチューブが発見され、21世紀前半から実用に向けて研究が重ねられ、
高強度のテザー(紐)だけでなく、いくつもの「軌道ステーション」の配置や
「軌道列車」の運行、外部エンジンによってテザーを常に引っ張ることによる
張力軽減、さらにテザーとレールのメンテナンス等、実運用のシミュレーションも
行われていたのであった。
開発費負担・権利の割り当てに関する先進国間のいざこざはあったものの、
2080年代にはテザーやステーションパーツの製造が開始された。
そして、22世紀初頭、2112年。
約30年の月日と50兆円を超える予算をつぎ込み、人類史上最大最長の建造物、
「The Lift」は完成したのであった。
…
1機目が完成すると、その後の進展は早かった。
10年と経たないうちに、2機目、3機目が出来上がっていき、当初の月資源開発
だけでなく、「宇宙旅行」というレジャーも活発化していった。
そんな中で、人々は新しいレジャー、いやエクストリームスポーツに熱中するようになる。
軌道ステーション周辺の移動に使われていた「バギーシャトル」に高加速のエンジンを
搭載し、規定のコースを周回するそれは「バギーシャトルレース」と呼ばれた。
かつて地上で車輪を回し世界最速の男を目指したように…
22世紀の男達は地球軌道上でプラズマエンジンを吹かし、
太陽系最速の男を目指していた…!
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